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一般名称化した商標問題をめぐって


ここでは、商標の一般名称化に伴う様々なリスクとそれらを防止する手段について紹介します。

商標は、消費者や他の事業者間でそれが識別力のある登録商標であるという認識なく使用されることにより、一般名称に変換されてしまいます。

商標の識別力がなくなると、顧客吸引力を発揮できなくなるだけでなく、企業はその商標に対する独占的地位を失い、第三者の使用を排除するといった権利行使もできなくなり、築き上げられたブランド価値も消失してしまいます。また、一度失われた商標の識別力のリカバリーの作業は非常に困難です。

まず、識別力を失い一般名称になったために商標を独占使用することができなくなってしまった以下の商標をご覧下さい。この言葉はまず欧米にて一般名称化され、日本語には外来語として入りました。

cellophane(セロファン、かつてDu Pont社の登録商標) cola(コーラ、The Coca-Cola Companyの登録商標のソフトドリンクコカコーラの一般名称に指定された言葉の一部) dry ice(ドライアイス、かつてThe Dry Ice Corporation of Americaの登録商標) escalator(エスカレーター、かつてOtis Elevator社の登録商標) jungle gym(ジャングルジム、かつてSebastian Hintonの登録商標) tabloid(タブロイド、かつてBurroughs Wellcome & Co.の登録商標) trampoline(トランポリン、かつてGriswold-Nissen Trampoline & Tumbling Companyの登録商標) yo-yo(ヨーヨー、かつてPapa’s Toy Co. Ltd社の登録商標) zipper(ジッパー、かつてB.F.Goodrichの登録商標)

また、日本にて一般名称化された商標は以下の通りです。

うどんすき(かつて美々卯の登録商標) 正露丸(かつて大幸楽品の登録商標) ホッチキス(かつてイトーキ社の登録商標) ホームシアター(かつて富士通ゼネラルの登録商標) 魔法瓶(かつて日本電球の登録商標) メカトロニクス(かつて安川電気の登録商標)

以前の商標権者は商標が一般化されることを喜び、その危険性を問題視していませんでした。一方、現在のブランドマネジメントでは、ブランドが一般名称にならないような多くの工夫が紹介されています。その理由は、ひとえに商標が一般名称にならないようにするためで、日本のSONYが2002年にオーストリアで「WALKMAN」に対する商標の占有権が取り消されたことはその一つの事例です。

現在はインターネット大手Googleでも、英語の “to google”(ググル)(「Googleの検索エンジンを使って検索する」)という動詞の出現によって一般名称化の危険を抱え、この動詞がすべての検索エンジンに対して使用されるようになってしまえば、Googleは今までの名前でのサービス提供の意義がなくなるような大きな問題が発生します。

また、有名な玩具メーカーのLego社は、そのブランドの複数形(legos)で一般化されてきていることを察知し、legos.comというドメインネームを登録し、そこからlego.comにユーザーを転送し、最初のページにブランドの説明(「legos.comにアクセスしてきたあなたはLegoの商品を探しているのではありませんか」)を載せて、ブランドの一般名称化対策を講じています。

以下に商標を一般名称化から防ぐためのいくつかのヒントを紹介します。商品の出所を特定するには、商標の識別性を維持しなければなりません。商標の識別性には5つの分野があり、それは創造性、恣意性、連想性、形容性や一般性